Architects Office
木造住宅の耐震化
木造住宅の耐震基準は、1981年（昭和56年）に新基準（新耐震）に強化され、続いて2000年（平成12年）にも大きく強化されて今日に至っています。古い基準は大地震に対応していないばかりでなく、経験則に依存するものも多く、今日心配される巨大地震に対抗できるものではありません。このことから、多くの自治体では耐震化に助成金を拠出しています。まずはこの制度を使って耐震診断をすることをお勧めします。
2000年以前の建物は、（2000年以降の建物はほぼ大地震に対抗できると考えられますが）、耐震診断により、実際に大地震に対抗できるかどうかが判明します。危険債が指摘された場合は、様々な耐震工事の方法があるので、可能な範囲で耐震改修することをお勧めします。
木造家屋の耐震性は、一般に壁が多いか少ないかにかかっています。地震に対抗するのは柱ではなく壁です。また、その壁のバランスよい配置も大切です。耐震診断では、主にこの壁を調査します。その壁は地震力に対抗できる壁の作りかどうか、バランスはどうか、天井裏や、床下を調べます。調べたデータは、まず図面に落とし、それから診断することになります。（下図）
この図面を元に耐震性を計ります。もともと家屋の設計図面が保管されていればよいのですが、図面がない場合はこの作業はけっこう手間のかかる作業になります。
上図は、耐震診断を行う計算ソフトの画面の一部です。調査をして、そこで得られたデータを入力し、重心や剛心の位置を計算し、PC上にこのような画面ができます。
次に、全体のバランスを見ながら、同時に各部の作りを考え合わせながら、補強の可能性を検討します。実際の建物は大工さんの手作りであるので、必ずしもこのコンピューター解析に乗るとも限らず、難しいところです。補強方法やその位置など依頼主と何度も打ち合わせを重ね、複数の補強手段の中から、経済性や技術的困難さを考慮しながら耐震補強の計画を練ることになります。
最後に ：
大切なことは、下手な耐震補強で使いにくい家にならないか、と言うことで、補強の仕方が大きな課題になります。
人の暮らす空間のデザインを決定する作業でもありますから、多くの手法の中から、使い易い空間造り、気持ちの良い空間造りを考えなければならないことは言うまでもありません。断熱性能や、空調性能も考える必要があります。可能な限り、これらを包括的に考えて解決したいと思います。