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2018年6月よりこちらに移転しました。
有料老人ホーム
有料老人ホームの理念は
1、家庭的であること
2、長屋的であること
3、参加型であること
4、成長し続けること
ちょっと何のことを言っているのかわからないかもしれませんが、少しばかりお付き合いをしていただけるなら、これらが何を示しているのか説明して行きたいと思います。
1、家庭的であること
これは分かり易いです。ただし掘り下げていうと、居住者とスタッフとの関係を指すものです。
入居者とスタッフとは、つまりサービスする側とされる側というような関係ではないということをい意味します。入居者にこれを求め、スタッフにはこれを実現するスキルが求められます。象徴的な言い方ですが、疑似家族的なつながりということです。
これに対して、某有名老人ホームなどまるでこの逆を行き、入居者はスタッフにお姫様のような扱いをされところもありますが、実はさみしい人間関係しか築けない晩年となってしまうかもしれません。
2、長屋的であること
これは、居住者相互の関係を指す言葉です。長屋とは例え話ですが、互いに、くまさん、はっつあん、と呼び合うような長屋の住人となる関係だと、例えています。
実に日本的な、程よい距離感を持つ、ほどよい関係性の構築です。それぞれちゃんと自立していて、また互いにリスペクトがあり、また互いに依存している。日本人的な理想的関係なのだと思います。今日では、一方ではプライバシー尊重とか、個人情報の保護とか、西洋的な価値観が強く出てしまい、これらを否定的にとらえる人が増えているような気もしますが、実際のところは、こういうところにあると私は思います。
もちろんこれのためのスキルをスタッフは持っている必要があります。いろんな入居者がいますから、それぞれが、理想的な関係を探していくということでもあります。
3、参加型であること
これは少し分かりにくいかもしれません。端的に言えば、入居者自ら進んで施設の運営に参加することを指します。それは究極のところ友人の世話を焼いたりすることです。趣味のサークルであったり、同好会であったり、または掃除洗濯、庭の作物を育てたり、または施設の方針を決め、対外的にも自らが代表を担うということ。これらを、施設側がサポートします。手取り足取り後押しします。もう少し踏み込んで言えば、他者へのサービスに喜びを見出す、ということになります。
入居者は、ただ寝ていればサービスをしてもらえるという存在ではないとします。言葉を換えれば、他社の有料老人ホームは、手厚いサービスの提供を歌いながら、ただそこで寝ていなさい、と言っているかのようです。それではぼけ老人のような感じになってしまいます。「人は理念によって生きられるものだ」という思いに強く同意するもです。
4、進化し続けること
これは、施設は常に進化し続けるものだ、ということです。あるいは、人とは何かという問いと同じで、人は死ぬまで進化し続ける存在である、という事に呼応してたものです。
施設では人が生きて生活していますから、いつも同じであればよいというものではありません。施設は入居者を見て、変化を促進していかなければならず、その変化を許容するものでなけければならない、ということです。
この言葉には、お判りでしょうが大切な意味があります。人は老いてもなお明日には何かを学ぶもの。成長するもの、いつまでも同じではなく、これこそが尊重されるべきことなのではないか、ということ。建物と人とを掛けて言っているわけです。
有料老人ホームは「複雑な体系」の産物です。様々な考え方があり、評価もそれそれ。わかりやすく話そうと言葉を選んでも、甘いも辛いも知り尽くした高齢の入居者にとってすぐに見すかされてしまいます。
有料老人ホームへの入居者は、多くを打ち捨て、越えなければいけません。そうでないととうてい「終の棲家」への住み替えはできません。入居者が越えなければならないもの、その生活様式の飛躍を支えるのは、そこにヒューマニズムがあるからなのではないかと、ある時から言ってみることにしました。(若輩者として恥ずかし気もなく・・・)
人らしくありたいというところ、やさしさと哀れみの漂うところに、ぼんやりと、その姿は見えてくるように感じます。先は長くない。しかし、いずれは、時間があれば、到達することができるのではないか。悠久の時、じっくりと時間をかければ、そのうち、いつかは悦楽を我がものとできるかもしれない。そういう老人たちの未来を築くために、もっとも大切なものはコミュニティだと考えます。ここに、老人ホームの応えなくてはならないものがあると思います。
ある時、私の知り合いのご婦人が有料老人ホームに入りました。
そこでは職員の熱い思いがしばしば互いにぶつかり、なぜなんだ。どうしてなんだ。という若いスタッフの戸惑い、情熱、あきらめ、喜び、こんなところは入ってみなければわからない。甘いも辛いも知り尽くしたご老人なら、これは悦楽ではないでしょうか。そう思いませんか。ご婦人にそう言ったら、「そうよ」と慎み深く笑われました。
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