
Architects Office
木造住宅の耐震化
木造住宅の耐震基準は、RC造やS造の耐震性が極めて論理的に解き明かされるのに比べ、経験則によるものが大きいと言われます。 何しろ耐震性が問題になるのは古い家ですから、建築時も大工さんの技量に委ねられている部分が多く、数値的に耐力をはかるのは難しい現実があります。しかし、はっきりと数値的に測れないとしても、耐震性のある家とない家の違いははっきりとしています。
木造家屋の耐震性は、地震力に対抗する力を持った壁がどのくらいあるかにかかっています。地震に対抗するのは柱ではなく壁なのです。しかし古い家は基準として地震に対抗する考えがあまりに少なかったので、この壁が弱かったり、少なかったりします。耐震診断とは、これらの壁の耐力を現代の基準で計ってみて、どのくらい劣っているかを数値で表します。
ところが実際は、壁の強さは中を見なければ本当のところは分かりません。それを外から診断するのですから、その制度は幾ばくも無いと言うことになります。それでも耐震性能の低い建物を耐震性が高いなどとありません。そのあたりのところが難しいところなのですが、これであるため、診断では床下を覗いたり、天井裏を覗いたり、耐震診断員はいろいろ努力を尽くすことになります。どうしても分からない場合は少しこじ開けたりするばあいもあります。 まあしかたがないことです。

上図は、耐震診断を行うPCソフトの画面の一部です。調査をして、そこで得られたデータを入力し、重心や剛心の位置を計算し、PC上でこのような画面ができます。全体のバランスを見ながら、各部の耐力を入力し、補強の可能性を考えます。木造は現地調査が非常に大切であるとされます。
しかし、診断結果は、必ずしもこのコンピューター解析が正しくはないところが難しいところです。PCの解析力は非常に大きいけれども、やはりこれだけで判断できるものではありません。補強方法やその位置など依頼主と何度も打ち合わせを重ね、複数の補強手段の中から、経済性や技術的困難さを考慮しながら計画を練ることになります。
ところで、私の今までの経験では、診断結果はほとんどすべて危険という結果になっています。
古い家の場合の相場は実際こういうことなのです。
耐震性が無いとされた場合は耐震補強をすることになります。
耐震補強も人の暮らす空間デザインですから、使い易い空間造り、気持ちの良い空間造りでなければならないことは言うまでもありません。断熱性能や、空調性能も考える必要があります。私たちは、可能な限り、これらを包括的に考えて解決したいと思っています。